タコス屋「タコベル」は日本をどう攻める? 海外部門トップに聞く、日本再上陸の勝算 | 外食 | 東洋経済オンライン

タコス屋「タコベル」は日本をどう攻める? 海外部門トップに聞く、日本再上陸の勝算

2015/04/20 5:00
ひき肉やレタス、トマト、サワークリームなどをトルティーヤで包んだ「クランチラップスプリーム」(680円)
 一度は日本を去ったメキシカンフードの外食チェーンが再上陸を果たす――。その名はTaco Bell(タコベル)。4月21日、東京・渋谷に1号店がオープンする。
 タコベルは1962年に米・カリフォルニア州でグレン・ベル氏が創業。その後、店舗網を拡大し、現在は米国で6250店、米国以外の26カ国でも250店を展開するグローバルブランドに成長した。週間来客数は世界中で4200万人以上にのぼる。
 同社の看板商品は「タコス」だ。トウモロコシの粉や小麦粉を焼いたトルティーヤに肉やレタス、チェダーチーズなどの具材が入っており、注文を受けてから調理する。そのほか、肉、サルサ、ライスなどをトルティーヤで巻いた「ブリトー」も定番商品の1つ。いずれのメニューも肉などの具材をカスタマイズできるのが特徴だ。
 価格は、単品のタコスが320円、ブリトーが500円(いずれも税抜き、以下同)。タコス2つにポテトなどのサイドメニュー、ドリンクをセットにした商品は790円とした。
 タコベルは1980年代後半に東京や名古屋へ進出したが、業績が低迷し1990年代前半には撤退。今回、約20年ぶりの日本での展開となる。今回の進出で興味深いのは、焼き肉チェーン「牛角」のFCや釜飯店「とりでん」など、2014年末時点で429の飲食店を運営しているアスラポート・ダイニングとフランチャイズ契約を結んだことだ。
 というのも、タコベルは本場米国では、ケンタッキー・フライド・チキンやピザハットの運営企業であるヤム・ブランズの傘下にある。両ブランドを運営する日本KFCホールディングスをパートナーとするほうが自然な流れだったはずだ。
 なぜ、今回の再進出でアスラポートをパートナーに選んだのか。さらに、日本市場での勝算やグローバルでのタコベルの成長について、どのような青写真を描いているのか。来日したタコベル インターナショナル(海外部門)のメリッサ・ロラ社長を直撃した。
目次

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できたてを食べられるのが"売り"

――タコベルの強みは何か。

タコベルは、若々しくてエネルギーに満ちあふれたブランドだ。社内では「メイド・トゥー・オーダー」と呼んでいるが、注文を受けてから商品を作るので、できたてを食べられるのが特徴の一つだ。

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来日したタコベル インターナショナルのメリッサ・ロラ社長(撮影:今井康一)

――日本の外食市場は1990年代後半を境にピークアウトしている。なぜ、このタイミングでの日本上陸なのか。

日本の市場は縮小しているかもしれないが、ファストフードとしての市場自体は大きいと認識している。メキシカンという新しいカテゴリーを提供することが、われわれの大きな“売り”となる。

日本の消費者は新しい味など新しいブランドに対しては非常に敏感だと思う。そういう意味で、タコベルも日本市場で受け入れてもらえると感じている。

――タコベルだけではなく、カールス・ジュニアシェイク・シャックといった米国発のファストフード店も相次いで進出を表明している。

われわれと同じように、日本のマーケットにチャンスがあると見ているということだと思う。その中でも、タコベルとしては差別化を徹底し、ユニークな商品を提供していくことに力を注いでいきたい。

このタイミングでの進出は、最適な時期だと考えている。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が発達したことで、発信力がある人の意見が大きくなり、さまざまなニュースも瞬く間に広まっていく時代になった。今こそ、大きなファンを獲得できる時期だと思っている。

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撤退後にファストフードが浸透した

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できたてを食べられるのがタコベルのウリの1つ(撮影:今井康一)

――日本には1980年代後半に進出したが、1990年代前半には撤退した。

かなり昔のことだが、当時はなかなか受け入れられなかった。だが、撤退した後になって、ファストフードが日本人の生活に根付くようになった。

今回、出店することを表明したら、SNSやWeb上でものすごい反響があった。タコベルの熱狂的なファンたちが日本にもたくさんいることにとても感激している。

――市場が変化したから、日本に再進出できると判断したということか。

それは両方だと思う。市場だけでなく、タコベルの戦略も変わったということだ。現在、米国で約6250店、そのほかの26カ国で250店を展開しているが、米国のみならず、海外で成長を遂げていく時期にきている。

海外はラテンアメリカ、アジア、ヨーロッパで店舗網を広げていきたい。アジアでは韓国、インド、フィリピンで展開しており、今後も店数を増やしていきたい。タイではフライチャイズの契約先を探している最中で、いずれ進出したいと考えている。

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メニューの豊富さもタコベルの特長だ(撮影:今井康一)

――海外、そして日本市場ではどのような成長をイメージしているのか。

海外では現在250店を展開しているが、2023年までに1300店体制へ引き上げていきたい。日本については、当面は渋谷の1店舗に注力して、いろんな情報を発信していく。

まずは渋谷店を成功させたい。その後はフライチャイズ先であるアスラポートと相談しながら決めていく。日本における今後の出店数については白紙の状態だ。

――今回、アスラポートをパートナーにしたのはなぜか。ヤム・ブランズ傘下なのだから、ケンタッキーやピザハットと一緒にビジネスをする可能性もあったはずだ。

タコベルは総代理店のようなフランチャイズを認めていないので、海外市場に参入するときはパートナーを探して進出することが一般的だ。したがって、(日本KFCホールディングスと)一緒にやるという選択肢はなかった。

アスラポートについては、同社の担当者が米・カリフォルニアの本社まで会いに来てくれた。そういった情熱や、ブランドに対する理解が深い点に、非常に感銘を受けた。さらに、日本でも相当数の飲食店を運営しているので、ノウハウを持っているということも大きい。人材の獲得や教育の面でも信頼できるパートナーだ。

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2つの日本独自商品を展開する

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日本独自商品の「タコライス」(530円、撮影:今井康一)

――今回の日本進出に際して、どのような商品を展開していくのか。

今回の進出に当たって、2つの日本限定商品を出すことにした。「シュリンプ&アボカドブリトー」(590円)と「タコライス」(530円)だ。ブリトーは日本人になじみがある具材を使用した一方、タコライスは日本で進化を遂げた商品であることから、投入することにした。

だが、これに満足することはない。商品の進化を継続させて、日本の消費者に受け入れられるようにしていきたい。

――日本に消費者にメッセージを。

タコベルらしいおいしい商品を日本の消費者が味わっていただけることをうれしく思っている。タコベル初心者は豚肉をチョイスしたブリトーを薦めたい。あと、具材を層にして五角形に包んだ「クレンチラップ」も食べていただきたい。これからのタコベルに期待してほしい。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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